冒頭からこんなことを言うのもなんだが、これはMBTIの記事ではない。私も「MBTIとエニアグラム」という小さな世界の話に携わっている時間はないので、便宜上「MBTI」としているが、これは私の理論の話である。ただし、この記事はそれを知らなくても読めるだろう。
MBTIとエニアグラムは、異なる考えから、異なる目標の為に構築されている。MBTIのハードウェアとエニアグラムのソフトウェアを組み合わせることで、自己理解への相乗効果が期待できる。これらのシステムは我々の生まれつきの性質と、育ちの要素を結び付けるための構造として使えるだろう。ただし、二つのシステムを調和させるには、統一性と正確性が要る。
この記事では、MBTIとエニアグラムを結び付けるための原則を確立し、二つのシステムを比較するための基盤を構築する。第一に、人はエニアグラムの全てのタイプにアクセスできる。ドン・リソは「Wisdom of Enneagram」の中で、次のように述べている。
あなたの中には9つのタイプ全てが備わっています。全てのタイプを探求し、全てのタイプが自分の中で機能していることがわかれば、人間性の全領域を知ることになるでしょう。
ドン・リソ
エニアグラムの9つのタイプには、人間が表現できる全てが凝縮されているという設定である。人は全てのタイプにアクセスできるが、最も深く繋がることができるのはひとつだけである。
第二に、エニアグラムは「どのようにタイプを獲得したか」を定義している。エニアグラムのタイプは、幼少期のトラウマに基づいて構築される。このトラウマには様々なレベルがあるだろう。人は幼少期の経験がどのような影響を与えたかに基づいて、自分のタイプを認識することになる。すぐにわかる人もいれば、ペルソナと完全に融合して、本当のアイデンティティと区別がつかない人もいる。
子供時代にそれほど苦しまなかったとしても、タイプを決めるためには苦しみを探し出さなければならない。そして(実際は大した傷ではなかったとしても)その傷によって人生の旅へ誘われる。召命を受け入れれば、自分が何者かわかるだろう。受け入れなければ、奴隷のままである。そして自分が抱えている傷を何かで埋めたり、屈服して一生を終える人もいれば、癒せる人もいる。
そして、タイプごとに固有の傷があるように、タイプ間で共有される傷もある。これが共有されるのは、エニアグラムの3つのセンター間である。ガッツセンターは怒り、ハートセンターは恥、ヘッドセンターは恐怖を共有している。重要なのは、幼少期に生じた心の傷がタイプの指標となることである。エニアグラムのタイプとは、心の傷である。
第三に、MBTIの外向・内向とエニアグラムのエネルギーの流れには相関性がある。MBTIには外向型と内向型があり、エニアグラムではエネルギーを向けることで自分の傷を補償する。通常、補償の方向は傷の方向と逆になる。これはエニアグラムで外側に向かうタイプは傷の原因が内側にある可能性が高く、逆もまた同様だからである。この方向性は以下の3パターンに分類される。
1.他者、物理的環境などの世界
2.内省、想像、現実逃避など、自分自身
3.世界と自分自身、両方の組み合わせ
そして、各タイプの方向性は以下のようになる。
ガッツセンター(怒り)
タイプ8→外
タイプ9→混合
タイプ1→内
ハートセンター(恥)
タイプ2→外
タイプ3→混合
タイプ4→内
ヘッドセンター(恐怖)
タイプ5→内
タイプ6→混合
タイプ7→外
これがMBTIと何の関係があるかと言うと、タイプ8,7,2が必ずしもMBTIで外向型であることを意味するわけではない。しかしタイプ8,7,2は関連する外向機能をスタックの上位に持つとは言えるだろう。ここでMBTIとエニアグラムをこじつけることができる。
例えば、ISFJはエニアグラムでタイプ2になる可能性がある。タイプ2は外界の他者にエネルギーを向けることで、傷を補償しようとする。ISFJのペアレントであるFeは、このタイプ2の傾向に最も関連する機能である。タイプ2にとってエネルギーの方向が外向きであることと、ISFJが内向型であることは両立する。つまり、MBTIで内向型であり、エニアグラムで外向きであることは不自然ではない。その逆もまた然りである。
第四に、エニアグラムは科学ではない。エニアグラムのシステムは根源的な動機、行動、歴史によって構築されている。エニアグラムはMBTIよりも柔軟性がある。エニアグラムは人間の本質ではなく、育成に注目したモデルである。勿論、本質と育成は相互に関連している。光を得るために変形した樹木は、木であることに変わりない。
ただし、エニアグラムは本質を全く無視しているわけでもない。ISFJはどのような幼少期を過ごしたとしても、タイプ8になることは考えにくいだろう。これが意味するところを考慮しなければならない。育成は我々の精神形成に影響を与えるが、生物学的構造を変えることはできない。しかし、構造の表現方法を変えるかもしれない。ISFJがタイプ2以外のタイプになる可能性は、大いにある。エニアグラムとは、育成の影響を受けた本質の発現である。
第五に、ウイングの要素がある。ウイングは副人格、二次的な特性とも呼べる代物である。各タイプは、エニアグラム図で隣接する二つのタイプにアクセスできる。タイプ3の場合、ウイングはタイプ2とタイプ4である。理論的には、全てのタイプは両方ではないにしても、少なくとも片方のウイングに傾斜する。
最後に、エニアグラムは非常に複雑である。ウイング、囚われ、ホーネビアン・グループ、本能のサブタイプ、その他の多くの要素を利用すると、同じタイプの個人差を色彩豊かに描写することができる。今後、これらの要素のいくつかを検討していくが、主な目的はこれら二つの理論間にある繋がりを整理することである。まず主要な構成要素を明確にし、その後に副次的要素を追加していく。
二つのシステムをリンクさせる基準は次のようになる。
1.MBTIの劣等機能に関連するエニアグラムタイプ(および各センター)の傷
2.MBTIの外向・内向および心理機能に関連する、エニアグラムタイプのエネルギー向性
3.相関するエニアグラムタイプの行動傾向に関する心理機能と機能的態度
上記の基準を使用して、各エニアグラムタイプを検討し、どのMBTIタイプに該当する可能性が高いか、およびその理由を調査する。次回からは各センターに焦点を当て、そのセンター内の三つのタイプ間の繋がりについて説明する。
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