このシリーズでは気質とインタラクション・スタイルについて紹介した。この二つの要素から、自分または他人のタイプを判定することができる。性格テストには欠陥がある。しかし、人はテストが好きである。何を隠そう、私もテストでINTP判定を出して喜んでいた時期があるが、私をINTJやENTJと思う人々もいる。今回はテストの問題点と、どのようにタイプを決めればいいかを概説する。
人がタイプを誤認する原因は大きく二つに大別される。ひとつはテストの精度、もうひとつは自己認識である。まずテストの問題点としては、心理機能に焦点を当てていないことが挙げられる。これは公式にも16 Personalitiesにも言えることである。テストを受けると、「あなたは60%内向です」という棒グラフが出てくる。私の友人はINTJだが、テストではISTPが出続けている。彼女は「ちゃんと考えればタイプはわかる」と言っており、私もそう思っていたが、予想以上に「わからない人」は大勢いるのである。
テストを受ける人々は自分のことをよく分かっていなかったり、社会的な役割や理想像を自分だと思っていたりする。あるいは自信がなかったり、全部当てはまっているような気がする。そもそも正直に答えないこともある。私たちは気晴らしのために特に興味のないものに時間を費やすことで自分を見失ったり、「なぜこう答えるのか」と分析しているうちに、「なぜ」のループに嵌り込んでしまう。自分を知りたかったらテストを受けまくるより、マインドフルネスを実践したり、考えを書き留める方がいい。
カール・ユングは、人間に主機能と補助機能なるものが存在することを主張した。心理機能の四つは自我にあり、四つは無意識にある。これらをひっくり返すと、潜在意識であるアニマ・アニムスと、超自我に入れ替わる。しかし、これらをテストすることはできない。できるとしても、誰もそんなテストは受けたくないだろう。一体どれだけの数の質問に答えなければならないのか、気が遠くなる作業である。そしてMBTIは指標だけを重要視している。その結果も不正確である。「ビッグ5やHexacoはいいが、MBTIは駄目だ」というのが通説となっている。
気質とインタラクション・スタイルはMBTIの指標や心理機能の代わりに、二つの基準でタイプを判定できる。これを考案したのはリンダ・ベルンである。テストは当てにならないが、心理機能を測定することはできない。そこで判定に用いる手段として、二つの要素を利用する。まずSJ、SP、NF、NTの気質を決める。そして自分が好むコミュニケーションの方法、インタラクション・スタイルを割り出せば、タイプがわかる。長々と百問以上の質問に答える必要はない。
この方法を用いれば、他人のタイプもわかる。他の人々のタイプがわかれば、心理機能もわかる。彼らの長所と短所、楽観的な点と悲観的な点、不安を抱えている部分と恐怖のある部分、どこが子供じみていて、どこに魂の腐敗があるか、生来の人間性がわかる。あなたが彼らと相性の良いタイプなら関係性を深めればいいし、相性の悪いタイプなら他のタイプをエミュレートすればいい。
これは言われなくても普段からやっている人も多いだろう。子供たちがごっこ遊びをしているのは、大人になった時に上手くできるように練習しているのである。ごっこ遊びが上手すぎて自分のタイプがわからなくなる人もいる。この「ごっこ遊び」を格好良く表現すると、ソーシャルエンジニアリングと言う。つまり操作である。全ての社会的交流は、ある種の操作であることを覚えておいて欲しい。
人間には生まれつき持っている性質と、育成によって獲得した性質がある。人を上手く操作するには、タイプ由来の性質と育成によって獲得した性質どちらも知る必要がある。環境要因を自分の本来の性質と勘違いすると、タイプがわからなくなる。好きな色、子供の頃に住んでいた町、仕事上の必要に迫られて身につけたスキル、これらは人によって異なるものである。しかし生まれつきの性質であるタイプは変わらない。この性質で起きる唯一の変化は、人が自我、無意識、潜在意識、超自我の間で移行することである。
ここで先に述べた私の友人を、タイプグリッドを使用して判定する。彼女はISTPかINTJか?ISTPとINTJのインタラクション・スタイルは共にフィニッシャーである。彼らは物事の道筋が見通せないと動き出すことができない。しかし、同時に行動して物事を完了することを重視してもいる。端的に話し、余分な情報提供を好まない。この二タイプの違いは気質から判断することになる。
彼女はSPかNTか?守護者ではない。彼女の口から「義務」の話が出てきたことは、ただの一度もない。彼女は自分がやりたいことだけやって生きている。理想主義者でもないだろう。「組織を良くすることができない人間が人を変えられるわけがない」と持論を述べていたことがある。人よりもシステムに関心が向いているのである。
SPとNTの違いは具体性を好むか抽象性を好むかの違いである。現実について話したがるのがSPで、将来に焦点を当てているのがNTである。ただし、具体と抽象は明確に区別できるものではない。マイケル・ピアースによれば、NFはNTより抽象度が高く、STはSFより具体性が高い。話を戻すと、私の友人は「今後の構想」の話を好むので、本人が言うようにINTJであろう。
自我がINTJであれば、無意識はENTPである。そして潜在意識はESFP、超自我はISFJになる。INTJはSe劣等であるため、他人に良い経験を与えられるか不安を抱いている。彼らは内向型であることも相まって、なかなか人を誘うことができない。また自分の外見がどう見えるかも悩みの種である。だから万が一、INTJに誘われたら感謝して、服装や話し方を褒めてやればいいのである。それが彼らの自信になる。「そんな嘘はつけない」?しかし、それがソーシャルエンジニアリングというものである。
このグリッドを使用すれば、誰でもすぐにタイピングできるようになる。これによって、人の自我だけでなく心の四つの側面が分かる。イン・チャージは直接・開始・制御、スターターは外向型だが、情報提供かつ行動、フィニッシャーは直接・応答・行動、そしてバックグラウンドは情報提供・応答・制御である。
ここで使用したタイプグリッドの詳細については、また紹介する。そしてタイプの相性、および心理機能の相性について掘り下げる。さらに人間の育成についても取り上げなければならない。様々な人間関係において、人間の本性であるタイプがどのように機能するのか、そして育成にどんな要素やシステムがあるか紹介することになるだろう。
初めまして。判定する方法、興味深く拝見させていただきました。
二つ質問させて下さい。
タイプグリッドの表はなぜ、SJ、SPときて、NJ、NPではなくNF、NTで分けるんですか?並びの規則の変化になにか意味があるのか気になります。
二つ目、こういうことがやけに気になるのはTiの仕業でしょうか?
以上よろしくお願いします。
はじめまして。
文字の組み合わせは指標ではなく気質で分類しているので、意味しているものが違うためです。
(厳密に言うとベルンの具体と抽象は感覚と直観ではない等)
構造やシステムが気になるのはTiというかNT的ですね。
お返事ありがとうございます。なかなか理解が難しいですが、既成概念にとらわれないで柔軟に学んでいきたいです。
今まで単純に外向はお喋りで内向は無口なのかと思っていたので、恐らくインチャージの人に「余計な事を喋りすぎ」って言われるのはどういうことなんだろうと疑問だったのが解った気がします。