ここまでユング深層心理学に基づいて心理機能、気質とインタラクション・スタイル、タイプの特徴について話してきたが、これらは人間の本質がどのように機能するかという話である。読者諸氏が大好きな「タイプの特徴」のバリエーションは今後も公開していくが、人間の育成が人の性格や行動にどのように影響するかについても、並行して投稿していく。

類型論にはタイプを説明するために考案されたモデルが複数あるが、人間の育成という側面について説明できるモデルも数多くある。

まず人間がベン図のようなものであると想像して欲しい。二つの円があり、これらを重ね合わせると、中央に共通するエリアができる。二つの円はそれぞれ人間の本質と人間の育成を表す。そして、その中央には人間がいる。

この円は追加で増やすことができる。例えば、環境、精神的な信念体系など。精神的には、これら4つの要素が人間を構成していると考えて良いだろう。人の性格において生まれつきの要素、自然の性質が大いなる力を発揮することは明らかだが、それが人間の全体像ではない。

おそらく人間の精神の最大60%は本人の性質であろうが、残り40%は探求する必要がある。特に理論が嫌いなSPたちは、類型論に対してこう思うだろう。「あなたは私のことを何も知らない。私のことを箱に入れているだけでしょう。こんなものは現実ではない」

SPたちの批判は「私がどこで生まれたのか、好きな色は何か、どんな経験をしてきたか知らない」という不満である。もっとも、SPたち自身も自分の経験をよく覚えていないのだが、ユング深層心理学でわかるのは人々の本質である。ここが重要なポイントになるが、誰かを本当に知るためには、タイプと育ち、全てをトータルして知らなければならない。

例えば、誰かと付き合って結婚してから10年をかけて相手を知っていくのもいいかもしれない。しかし、私の両親のように30年かけても結局理解できない可能性もある。タイプを知っておけば、少なくとも生まれつきの性質については把握できる。あとは育成に集中するだけでいい。彼らの出身はどこで、好きな色は何か、どんな趣味を持っていて、どんな伝統を避けているのか、といったことである。

これら全てが人間の育成を構成する要素である。ビッグ5では育成に重点が置かれている。ナルシシズムもある程度は説明できる。ENTPならばナルシシズムで超高得点を取るだろう。とにかく、育成もテストで測定できる。

例えば、Amazonプライムアカウントを持つ全ての人のタイプがわかるとしたら?そのデータを取得して、顧客の購入の意思決定に関連づけることができる。潜在的な行動パターンを予測することで、本質だけでなく育成における好みも理解することができるだろう。誰かが何らかの方法で、このタイプ論をソーシャルメディアに取り入れてテクノロジーに影響を与えたら、恐ろしいことが起こるだろう。深層心理学とは紙上のテレパシーである。文字通り、人の性質を読むことで人の心を読むことができる。さらに行動に関するデータを収集することで、育成についても理解を深めることができる。

ちなみに、この記事は人間の本性と育成についての違いを紹介しているだけである。具体的な要素については個別にシリーズを展開していくが、このシリーズでは次の記事から基本的な人間関係、愛と尊敬、魅力や親密さについて取り上げる。これ以外にも語るべき要素は色々ある。例えば、ゲーム理論としても知られるジョン・ナッシュの支配力学に基づいて、人間の魅力と親密さに関する定理を説明することができる。

人間の育成行動を説明するために、ゲーム理論と性格タイプ論を利用する。そして、これらを掘り下げていくと、ソーシャルエンジニアとして力について広い視野が得られるだろう。

誰もがテストを受けて、その結果が全ての答えだと思い込む。実際には、タイプを知っただけでは、ソーシャルエンジニアとしてコールドアプローチを含む、あらゆる社会的状況に対応できるようにはならない。例えば、バーや道端で女性をナンパしたり、誰かに興味を持って友達になりたい場合など、あらゆる状況で人間の本質と育成が結びつく。だからタイプだけでなく、人間関係で育ちの側面がどのように機能するかも検討する必要がある。

タイプ以外で生まれつきの要素として、性別の問題がある。いわゆる成熟した男性性、あるいは神聖な男性性と呼ばれるものである。成熟した女性性、神聖な女性性にも注目しなければならない。これは我々の文化にとって非常に重要なものである。家父長制やフェミニズムといった概念が、人々の生き方に大いに影響を与えている。

これらの概念をナビゲートし、その他大勢ではない何者かになる方法について紹介する。群衆から自分自身を区別して認識するために、この知識を活用できるだろう。これはあらゆる状況に当てはまる。人間関係、ビジネス、販売、どんな局面にあっても、それは機能し適用される。繰り返すが、この記事は育成について語るべきトピックが色々とあることを紹介するために書いた。タイプに関する質問はよく来るが、読者は育成について頭がお留守のように感じられる。もしかしたら、そういう要素が存在することも知らないかもしれないので、気を回した次第である。