このシリーズの前半では気質について取り上げたが、後半はインタラクション・スタイルを説明する。気質と同様にタイプは4種類のスタイルに分類されるが、分類の基準は異なる。噂によると、公式でもインタラクション・スタイルを導入しているらしい。公式と言っても海外の話で、日本の公式はテストを基にした自認でタイプを決める。しかし、自認以外でタイプを決める手段があるとしたら?今回はその手段について紹介する。

インタラクション・スタイルはリンダ・ベルンが考案した理論である。カーシーは気質によってタイプ分類を単純化したが、同じ気質のタイプ同士の違いは明確にしなかった。「それじゃ用が足りないだろ、無能」と思ったかどうかは知らないが、ベルン博士はインタラクション・スタイルを追加することで、同じ気質内の差別化を図った。例えば、ISTPとISFPは同じSP気質だが、ISTPはフィニッシャータイプ、ISFPはバックグラウンドタイプである。

ただし、ここで紹介するのはフィニッシャーでもバックグラウンドでもなく、イン・チャージである。イン・チャージ、または構造タイプはESTJ、ESTP、ENTJ、ENFJから構成される。全てのインタラクション・スタイルは4つの気質を含んでいる。つまり、守護者、職人、知識人、理想主義者である。

タイプの組み合わせを見て、「これは何を基準にした分類なの?」と思った人もいるかもしれない。インタラクション・スタイルは、各タイプが好むコミュニケーションの方法である。他人が自分と同じ価値観を持っていると思うことを「BLM症候群」と言うが、指標や心理機能が共通しないタイプ同士も同じグループに分類される点がポイントである。

タイプ間の対立と言えば、SとN、TとFの違い、あるいはTeとFeの違いなどが一般的だろう。指標や心理機能という記号に従って判別するのはわかりやすく、当然それが対立の原因だと思ってしまう。しかし、実際はNT同士、Se同士でもコミュニケーションの方法は違うのである。人はあらゆるタイプと対立する可能性がある。そう言われたらそんな気がしてきただろう。初回にも言ったように、「全ての悪は無知に根差している」のである。

さて、イン・チャージはダイレクト・イニシアチブ・コントロールという三つの要素を持つインタラクション・スタイルである。彼らは構造タイプと呼ぶこともできる。何故かと言うと、彼らは構造を背景にして仕切るのが好きだからである。誰も頼んでいなかったとしても、彼らはその場の責任者かのように振る舞う習性を持っている。それはJの特徴?MBTIのことは忘れろ。

ダイレクトは男女を問わず口数が少ない傾向にある。彼らは率直で、無駄口は叩かない。「口から先に生まれてきたような男」と言えばENTPを連想するが、ESTPは違う。ENTPに関してもう一つ言っておかないとならないが、彼らは本人たちが思っているほど賢くない。彼らはもっともらしく流暢にお喋りすることを賢さと勘違いしているが、単にインフォマティブなので情報提供を好むというだけの話である。

ESTPはトリプル・ダイレクトと呼ばれるタイプである。どういうことかと言うと、彼らの自我、潜在意識、無意識にある影の側面は全てダイレクトに該当する。「あの人はダイレクトかインフォマティブかわからない」という場合は、自我以外の側面がどちらに該当するか含めて考えてみると、タイプを絞り込めるだろう。

二つ目の要素であるイニシアチブは、会話を率先して始めるか否かである。彼らは自分が主導権を取って、会話を始めることを好む。テストを受けると「外向が70%、内向が30%」などの割合で結果が表示されるが、これを「お喋り指標」あるいは「社交性指標」と捉えている人も多いのではないか。実際のところ、これは会話を先に始めたいか、相手に始めて欲しいかの違いである。イン・チャージは自分から話しかけたいが、お喋りではない。

ダイレクト、イニシアチブ、最後はコントロールである。「コントロール」と言うと支配的な印象を受けるが、その印象に概ね間違いはない。トランプ元大統領を見ればわかるが、あんな感じである。彼らは物事を思うようにコントロールしたい人々である。ただし、それがどのように表れるかはタイプによって違う。これと対極にあるのが「ムーブメント」である。ムーブメントは物事が動いていることを好む。ここから対立が生じることもあるだろう。

要するに、イン・チャージの人々を不快にさせたいと思ったら、自分から彼らに話しかけて、回りくどい言い方で会話を引き延ばし、制御できない流れにあるイベントに巻き込めばいいのである。彼らは決定権がないことも嫌う。

ところで、ESTPはイン・チャージの中で唯一のP型である。これが何を意味するかと言うと、理論的には特に何の意味もないのだが、こじつけることはできる。ESTPの役目は構造を維持することではなく、構造をテストすることにある。ESTPが所属する組織のルールに不満を覚えた場合、彼らは躊躇なくそれを破る。そして自らに都合の良い構造に置き換える。

先ほど、「コントロール欲求がどのように表れるかはタイプによって違う」と言ったが、これは同じイン・チャージでも気質が違うためである。しかし、どのタイプも主導権を握って事態をコントロールしたいと思っている。ENTJは「金の亡者」でENFJは「感謝の押し売り」という違いはあるが、本質的なパターンは共通していると言えるだろう。ENTJは技術志向で、新たなシステムを導入して収益を上げることに必死になる。ENFJは慈善活動やコミュニティなど、人に関わる活動に焦点を向ける。こう書くとENTJが利己的で、ENFJが利他的であるかのような印象を受けるが、それは大いなる間違いである。どのタイプも利己的な偽善者であり、これを読んでいるあなたも例外ではない。

悪口ばかり書いていると思うかもしれないが、私はTiヒーローとして真実に忠実なだけである。どのタイプにも美徳と悪徳があり、その二つは表裏一体と言えよう。例えば、ENTJの美徳は「利他主義」、悪徳は「強欲」である。各タイプの美徳と悪徳シリーズもいずれ掲載する予定である。

そしてESTJがいる。SJがN型に叩かれる理由は以前に紹介したが、そもそも何故ネット上にはN型が多いのだろう。言い換えると、なぜ人はN型になりたがるのか。進化心理学によると、人が消費行動を行うのは自身の資質を見せびらかすためである。この「消費行動」とは生活に必要ない高価な商品、「資質」というのはビッグ5の性格特性+一般知性を指す。しかし誰もがそのような消費を行えるわけではない。例えば学生、低収入、収入に恵まれていても見せる相手がいない、など。そこで性格診断の出番である。

つまり、プロフィール欄に「INTP」と書くだけで、見せびらかしを目的とした消費行動に伴う「金銭の支払い」という損失を被ることなく、同様の満足を得ることができる。私はずっと不思議だった。「類型は役に立たない」と言いながら、なぜ人は類型にしがみつくのか。「役に立たない」とは何の役に立たないのか。発信する立場ですら、理論的な事実に無関心なのは何故か。彼らは「自分を知りたい」のではなく、「自分を見せびらかしたい」のである。

話が脱線したが、まとめると、イン・チャージはダイレクト、イニシアチブ、コントロール特性を持つグループである。彼らは率直に話し、相手の反応を促して、物事が混乱しないようにコントロールしようとする。しかし誰もがそのような態度を受け入れるわけではない。彼らの話し方が配慮に欠けるとか、支配的だと思う人々もいるだろう。つまり、よく言われるような「T型は言い方に気を遣わないが、F型は配慮する」という単純な話ではないのである。ひとつ賢くなったところで、今回の講義は終了とする。