ESTJ、ESTPに続いて、今回はENTJの出番である。この三タイプの共通点はダイレクト・イニシアチブ・コントロールという同じインタラクション・スタイルであることだが、気質はそれぞれ違う。ENTJは幹部、指揮官、リーダーなどの代名詞で呼ばれることが多い。女性ENTJの典型像は「肩をすくめるアトラス」のダグニー・タッガートである。数多の障害を乗り越えて鉄道会社と男を手に入れたやり手である。

他のタイプ同様、ENTJにも心に四つの側面がある。自我がENTJ、無意識がエンジニアであるINTP、潜在意識はアーティストとして知られるISFP、超自我はESFJである。

ENTJは非常に合理的かつ組織的である。ESTJと同じTeヒーローを持つ彼らは、他の人々が何を考えているか鋭敏に認識している。他の人々の考えを知ることは、彼らにとって非常に重要である。なぜなら、自分が高く評価してもらえるかどうかは、多数派がどのように考えているかに依存するためである。だから自分がリーダーになれない場合は、権力者の犬になることも辞さない。権力者に評価されることによって、ENTJの劣等Fiは良い気分になる。

ENTJが自分の価値について不安を抱いているのは、劣等Fiが原因である。自分が悪人である不安、無能である不安、成功できないかもしれないという不安が生きている限り付き纏う。彼らはTeヒーローなので、デフォルトでコントロール志向である。他のコントロールタイプ同様、ENTJは混沌を嫌う。制御されていない状況で進歩に向かって歩み始めることはできない。だから混乱の中でも目標に向かって動きたいタイプたちを支配しようとする。

ほとんどのENTJは金持ちになることを目指している。ダグニー・タッガートの台詞を借りるなら、何ができるか証明したい。Niペアレントは彼らが望むものに対して無責任であることを許さない。このため、彼らの願望は自動的に達成すべき目標として設定される。ネットで検索すると、ENTJが金持ちランキング1位に君臨しているデータが出てくるだろう。この原因を心理機能にこじつけると、Niがビジネスで成功したいという強い願望を抱き、Seチャイルドが他の人々が行っていることを調べる役割を果たす。

そこで学んだシステムや技術を用いて、彼らは実行すべきタスクを最適化する。彼らにとって、物事は制御下になければならない。やるべきことを「合理性」という枠の中に嵌めておかないと、Siトリックスターの弱点が露呈するからである。この位置にあるSiは物忘れが激しくなるだけでなく、Niと組み合わさることで自制心の欠如をもたらす。これはENFJにも言えることだが、彼らは非常に衝動的である。

ひとつ例を挙げると、かつて私が運営していたサーバーに、とあるENTJがいた。彼はなかなか面白い男であったが、やはりNiなので電波の影響を免れなかったのか、「これからの時代ISTJとISFJは発達障碍者扱いされる!」と言い出したので退場していただいた。言わなくていいことまで口走るのがENTJである。この衝動性は人間関係のイニシアチブにも繋がる。

彼らのSeチャイルドは忠誠心を必要とする。ESTPがS型のアルファなら、ENTJはN型のアルファである。ENTJが会社を経営したり、友人グループを組織する時、彼らは相手が忠実であることを期待する。ENTJがパーティーなどで大盤振る舞いするのは、他人に与えた経験がSiに忠誠心として芽生えることを望んでいるからである。Seチャイルドは人々に良い経験を与えたい。顧客に良い経験を提供して、リピーターになってもらいたいと思っている。ただし、忠誠心を獲得した後は、Seユーザーに共通する忠誠心チェックが実施される。これはビジネスでも、友人関係でも、子育てでも常に起こる。しかし、忠誠心を気にするあまりSeの子供がNeクリティックの疑念に囚われると、厄介なことになる。

Neクリティックは他人の意図に批判的である。ENTJは偏執的なまでに他人の意図を批判している。彼らは人々が悪意を持っている、自分を裏切るつもりであり、利己的な人間であると何かの拍子に思い込む。「こいつは忠実に見えるが、自分を陥れる計画を立てている」という考えに取り憑かれ、「率直に話す」ことを要求する。それは子供時代の経験に起因しているかもしれないが、これがENTJの人間関係に悪影響を及ぼすことになる。彼らは他人を信用することができないのである。人間は自分の望むものに対して無責任である。監視して、行動を制御しておかなければ人々が間違いを犯し、自分を不当に扱うかもしれない。それが真実かは別として、とにかく彼らの中ではそういうことになっている。

さらにESTJと同様に、彼らにはFi劣等の問題がある。これは自尊心に関わる問題である。Fi劣等の人々は、基本的に人間性を褒められることがない。彼ら自身、相手の気分を良くすることに興味がないので、魂のない機械人間のような印象を持たれてしまう。つまりどうすればいいかというと、彼らが素晴らしい人間であることを評価してやるのである。「ENTJさん、素晴らしい経験をさせてくれてありがとう」と言ってやればいい。ついでに謝礼も支払えば言うことなしである。

ENTJの美徳は利他主義である。しかし彼らは貪欲な人間であると非難されることが多い。彼らが他人の気持ちを気にすることができないのは、自分が悪人であることを恐れることに忙しく、人の気持ちまで気にかける心の余裕がないからである。余裕があれば、少なくとも寛大になることはできる。だから「金の亡者」「人でなし」とENTJを罵倒するのはやめて欲しい。彼らは自分が善良な人間であることを証明するために全力を尽くしている。

ENTJの潜在意識はアーティストとして知られるISFPである。彼らは心の中に思い描いた最高の作品を、テクノロジーを使って表現する。大抵の場合、それは商業活動を伴う。ENTJは自分が作り上げた最高の芸術、素晴らしい会社を大切な人に評価してもらいたいと思っている。最高傑作を生みだし、あなたに良い経験を与えるためなら、彼らは努力を惜しまない。ISFPと言えば、自由を愛する職人気質である。しかしSP気質の人々だけではなく、NiSeユーザーは意思決定の自由を必要とする。選択の自由がなければ、物事は停滞してしまう。ENTJは自分の感情のままに、自由に生きることを望んでいる。

しかし、そこでENTJの作品を評価しない人々もいる。「自分は良く思われていない。自分は十分ではない」と彼らのFiは敏感に感じ取る。彼らは立派な会社を立ち上げ、世界を救うために貢献できる利他的な人間であったかもしれないが、傷ついたFiは利他主義を貪欲に変貌させる。そして、誰も助けたくないと思い、Neクリティックによって誰もが救いがたい無能に見えてくる。特にENTJの女性は「女性」という分類に違和感を持たれる。ENTPの男性と比べると、どちらが男かわからない。ここでもJPスイッチが発生しているのである。

彼らのもうひとつの不安、5番目の機能はTiネメシスである。ENTJが他人の考え、あるいは他人が何をしているか知りたがるのは、自分が愚かであることを心配しているからである。自分が間違っているのではないか、賢くないことがばれてしまうのではないか、という恐怖を克服するために、彼らは外部の情報源に頼る。「○○が言っていた」という根拠があれば、間違いは自分のせいではない。

既にご存知のように、Seユーザーは物忘れが激しい。それはENTJも例外ではない。メモリはあるが、ハードドライブがない。彼らは記憶を物体に保存している。例えば、あるポットを手に取った場合、ENTJはそのポットがどこにあったか即座に知るだろう。記憶はENTJ本人ではなく、外部の環境に保存されている。長期記憶を担当するのはSiユーザーである。だから必要なことを思い出してもらうために、彼らはSiユーザーの近くにいなければならない。代わりに、ENTJはSeチャイルドによって機械の修理をしてやることができる。

そして最後にFeデーモンである。ENTJやESTJは常に人々に正しい物事のやり方を教えようとしているので、熱が入りすぎて相手の感情のことはお留守になっている。そう見えなくても、ENTJの劣等Fiは善い行いをしたいと思っている。しかし、そのために相手の感情は犠牲になるのである。これは奇妙なことに思えるかもしれない。「理解されない」にも色々あるが、彼らの性質が理解されることは稀である。INTJやINFJは「私の電波を受信してくれる人がいない」とうるさいが、実はENTJも思っている。彼らの敏感なFiには優しくしてやらねばならない。

もしもENTJの人間性を非難し続けると、超自我ESFJが目覚めることになる。彼らはあなたに素敵なディナーを作ってくれるかもしれない。キャンドルを灯し、完璧な演出をして、普段は言わない優しい言葉までかけてくれるだろう。しかし、その後には何らかの制裁が待っている。それは離婚手続きかもしれないし、破格の請求書かもしれない。彼らが非道徳的なことをしていたら、それが間違っていることを教えるだけでいい。その指摘が正しいと思えば、彼らはすぐに考えを変える。Siトリックスターは比較する過去のデータを持たない。このため、決断は瞬時に行われる。ENTJの人間性を治そうとしても、出来の悪いESFJになるだけである。

「知識は力なり」という言葉がある。彼らがINTPやENTPを好むのは、多くの情報を与えてくれるからである。情報が多ければ多いほど、自分が賢くなった気分になるし、自分より非道徳的なENTJが大勢いることを確かめられる。さらに、言うまでもないことだが、自分の目標を達成するためには情報が必要である。だからこの言葉は、ESTJよりもENTJに相応しい。

ENTJを理解するポイントは、彼らがやりたいようにやらせること、彼らが悪人ではなく善人である自信を持たせること、彼らの知識が正しい場合は間違いを恐れる必要がないと伝えること、忠誠心を見せることである。注意事項が多くて面倒くさい人々だと思っただろう。しかし、これを守らなければNeクリティックが偏執的な結論に飛びついて、あなたが彼らを裏切っている、会社の利益を盗み取っているというシナリオをでっち上げる危険性がある。ENTJは結論に飛びつく前に、自分の偏執性を顧みる必要がある。自己成就予言とは、思い込みという結果が原因を生み出すことを心に留めておかなければならない。