前回はESTJについて紹介した。このシリーズでは読者諸氏が大好きな「タイプの特徴」を主題にして16タイプの人物像について掘り下げていくが、初回がESTJでがっかりした人もいたかもしれない。私としては最も不人気なタイプを最初に持ってくることで、読者がスクロールする手間を省いたつもりである。しかし、意外にもあれを読んでセッションに来ていただいたESTJの方がいたのである。ESTJに「ネオユングって何ですか?」と聞かれる日が来るとは思わなかった。ということで、今回のメインはESTPである。トリプル・ダイレクト、非常に率直なミスター・現実主義者でもある。
彼らのSeヒーローは現実を鋭く認識している。このため、何か非現実的なことに取り組んでいる人物を目ざとく検知する。そして、それを指摘せずにはいられない。しかし彼らはダイレクトなので、懇々と諭したりはしない。代わりに相手に何か経験を与える。そして相手が適切に反応しない場合、その人物はESTPの「現実性チェック」に不適合な人間という烙印を押される。彼らは常に現実性チェックを行っている。それは人に対しても、システムに対しても例外なく適用される。
ESTPはSP気質なので自由を愛する。しかし、彼らのインタラクション・スタイルはイン・チャージである。つまり自由人であると同時に、状況をコントロールする責任者でもある。「責任者」と言うとお堅いイメージがあるが、彼らはシステムを管理する責任者ではなく、システムを破壊する責任者である。例えば、学校というシステムを破壊するのはESTPであることが多い。入学後しばらくは大人しくしているが、Seヒーローが「こんなシステムでは三年間もやっていけない」という現実を認識するやいなや、行動に移る。彼らのおかげで他の生徒も校則違反しやすくなる。そしてESTPが作り出した新たな現実を、ESTJの教師が管理する。こうしてESTJは教師としての経験を積んでいく。
ESTPはPタイプなので計画を立てない。計画を立てると、それを守らなければならないし、得られる情報が制限されてしまうからである。彼らは一日に起こる出来事に対応して、その場で戦術を立てることを好む。Jタイプは一日の計画を戦略的に立てる。しかし世の中の半分はPタイプなので、Jであっても計画通りに過ごすことは困難を極める。そして、いつの間にかPのようになるJや、「ひとりが好き」なEJが発生する。これがJとPの設定を守った説明である。この設定の不備については、前回のESTJに関する記事を参考にしてもらいたい。
ESTPの自我にある機能はSeヒーロー、Tiペアレント、Feチャイルド、そして劣等Niである。Tiペアレントは非常に批判的である。彼らはシステムや人を論理的に批判し、容赦なく否定する。それというのも、Tiペアレントは悲観的な機能だからである。これがTeクリティックと組み合わさると、データや既存のシステムにも批判が及ぶことになる。この批判と現実性チェックに耐えられないシステムは破壊され、対象が人間であった場合は、物理的な争いが発生する恐れがある。
どこぞの救世主は「私はアルファではなく、オメガである」とのたまったらしいが、ESTPは「お前はシグマではなく、オメガである」と無慈悲な審判をINTJに下すかもしれない。実際、複数のINTJからESTPやESFPによる被害が報告されている。彼らのSeヒーローは現実から目を逸らすことを許さない。ESTPはINTJのFeトリックスターが社会的な期待を無視したり、陰謀を巡らせて破壊する場面を見逃さない。ESTP自身もシステムを破壊するが、Feチャイルドによって有効と判断されたシステムには従う。だからそれを無視する人間には、現実性チェックが発動するのである。
現実性チェックの派生として、忠誠心チェックというものがある。これはSeユーザーに共通して見られる現象だが、彼らは身近な人々を放置、あるいは突き放して、それでも自分に忠実であるかを試すことがある。SeヒーローであるESTPはその最先鋒である。彼らは現実をチェックし、システムをチェックし、他人の忠誠心をチェックすることに忙しいので、形而上的な事柄にかかずらっている暇はない。
ESTPの潜在意識はINFJである。彼らは「人々を良くしようとする」使命感を抱いている。どのタイプもそれぞれのやり方で世界を救おうとしているが、自分のことは棚に上げて人を改善したがるのがINFJである。ESTPはあれになりたいのである。Feチャイルドは外向的感覚によって良い経験を与え、他人の気分を良くすることを好む。しかし彼らのやり方は些か武骨、ともすると乱暴になる場合もある。Seヒーローの現実性チェックに引っかかった人物を、ESTPは否定的な観点から説得する。時には「獅子が我が子を谷に突き落とす」ような振る舞いもするだろう。これはオメガをベータやアルファに成長させるための、ESTPなりの措置である。誰もが現実を認識しなければならない。認識していないなら、それに直面させてやるのが「思いやり」というものだろう。少なくとも、ESTPはそう信じている。
同じタイプであっても、男性と女性では守備範囲が違う。一般的に、男性は大きなもの、女性は小さなものに関心がある。小さなことが大きなことより遥かに重要な場合もあれば、その逆もあるだろう。例えば、結婚指輪は小さなものだが、非常に重要なものである。これと同じことが類型論にも言える。「どのタイプも素晴らしい」のではなく、特定のタイプが素晴らしい時もあれば、そうではない時もある。あるタイプが素晴らしいと思われる状況では、別のタイプは素晴らしくないと思われる。しかし、その現実を認識できない人々もいるのである。そのような人々はESTPを嫌うだろう。
彼らの第一の弱点は劣等機能であるNiにある。ESTPは自分の将来に強い不安を感じている。自分が何を望んでおり、これからどうすればいいのかわからないので、彼らは他の人々が何をしているか情報収集を欠かさない。不安が高まると、行動することができなくなる。ESTPは自分で選択肢を検討することができないので、このような状況に陥った場合、誰かが救いの手を差し伸べて、選択肢を提示してやる必要がある。これは劣等NeであるISTJやISFJでも構わない。「猫の手でも借りたい」とはこのことであろう。
さらに、ESTPは過去に囚われることがある。彼らは人々に最高の体験を与えたいと思っているが、過去はもっと良かったのではないか、今の経験が過去と比べられてしまうのではないか、という思いが脳裏を過ぎるかもしれない。実際のところ、Siネメシスが司る長期記憶は不正確であり、ESTPは自分の過去をあまり覚えていない。現在の情報が過去の情報を押し流してしまうからである。だから彼らにとっては「今が全て」なのである。このため、ESTPは友人や恋人、家族など親しい人々と常に思い出を作り続ける必要がある。
ESTPの無意識はISTJである。ESTPは理論そのものは好きではなく、それを裏付ける実際のデータを要求する。しかし、Teクリティックはデータや統計に批判的なので、彼らはしばしばそれらに従うことを拒否する。これはTeユーザーにとって驚きの事実かもしれないが、データなどいくらでも捏造できることを知っているからである。また他人の考え方にも批判的である。データがあろうとなかろうと、取り敢えず批判する生き物だと思った方がいい。しかし、年を重ねて経験を積んでいくうちに、彼らは自分が最も賢いタイプではないことに気づき始める。ENTPはいつまでも自分が賢いと思っているが、ESTPは現実主義者なので、自分が処理できる範囲の人々に経験を与え、そうでない範囲のことからは手を引くことになる。
そして彼らにはFiトリックスターがある。彼らは道徳的な意思決定を行わない。さらにTiとTeは悲観的な機能なので、ESTPは意思決定のために常に他の人々がどう思っているか、今は何をしているのか、情報収集を欠かすことができない。しかし収集したデータを覚えておくことができないので、彼らの決定は時に無謀なものになる。ESTPは無秩序に見えるが、コントロールタイプなので物事を制御下に置きたいと思っている。が、過去に何が安全であったか、これからどうすれば安全なのか、誰かに聞かないとわからないのである。本当は自分の将来をとても不安に思っている。私の弟はESTPだが、浪人生時代も同級生が何をしているのか気になって仕方がないようだった。そして結局、二度目の受験も失敗した。「将来への不安」というプレッシャーに負けたのだろう。そういうわけで、SJの皆様には彼らの事情をご理解いただきたい。
しかし、「安全な決定」「最良の選択」を優先すると、ドグマの罠が待っている。スティーブ・ジョブズによると、ドグマとは他の人々の思考の結果に従って生きることである。この罠に陥らないために、ESTPには選択の自由が必要なのである。Teクリティックによってドグマを退け、自分がやりたいことを何でもできる自由を手にした時、彼らはNiの不安を克服して、自分が望むものを理解することができる。
彼らのデーモンはNeである。このため、ESTPは他人が何を望んでいるかに無関心である。ESTPは自分の未来がどうなるか不安で仕方がないので、他人の望みなど気にしている暇がない。他人の未来がどうなろうと、彼らの知ったことではないのである。ESTPがサイコパスと言われるのは、Fiトリックスターによる道徳性の欠如、そしてNeデーモンによる他人の願望に対する無関心の合わせ技である。自我にあるFeチャイルドは他人の気分を良くしようとするが、Seヒーローによって「こいつはオメガである」と知覚された人間は無視される。その言動がサイコパスに見えるのである。
彼らがNeを発揮するのは、超自我ENFPに囚われた時だけである。自分の未来への不安が頂点に達した場合、あるいは人々が自分を尊敬しない場合、ESTPは他人の未来を破壊することを厭わない。自分がお先真っ暗だというのに、他人が幸せになるなど断じて許容することはできない。その憎しみから、彼らは他人が不幸になるような助言を与える。あるいは、人が口に出さない醜い願望に従うようにそそのかす。そして自分の助言によって人が破滅する様を見て、暗い喜びにほくそ笑むのである。
これがESTPのプロフィールである。彼らは自由を求めるSP気質とコントロール志向のイン・チャージという一見、矛盾した性質を持つが、これは心理機能のメカニズムによるものである。どのタイプにも相反する要素が同居している。矛盾ゆえに人生は悲劇であり、勝利も勝利の望みもない永久の闘争である。ESTPがドグマを適切に取り入れ、潜在意識INFJとして人々を導くためには戦い続けなければならないだろう。このシリーズでは引き続き、残り14タイプのプロフィールを掲載していくが、それらもタイプの全てを説明することはできない。各タイプの「美徳と悪徳」では、また別の側面をお見せできるだろう。今回は以上である。
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