前回に引き続き、今回もインタラクション・スタイルを取り上げる。今回は「スターター」と呼ばれるグループである。このグループにはENTP, ENFP, ESFJ, ESFPが所属する。前回、紹介したイン・チャージにおいてESTPは唯一のP型だったが、スターターの中でESFJは唯一のJである。いかにも無秩序なEP三兄弟の中にESFJが紛れ込んでいるのは違和感を覚えるが、ESFJとENTPには共通点がある。
まず彼らは同じクアドラである。誤解がないように言っておくと、MBTIとソシオニクスは別の理論である。しかし私がやっているのはMBTIでもソシオニクスでもないので、問題ないだろう。この二タイプはアルファ・クアドラ、名付けて「十字軍」に属する。それだけではなく、ESFJとENTPは似通った脳波のパターンを持つ。ダリオ・ナルディが言っているので間違いない。ただしサンプル数は十数名(笑)である。タイプと脳科学をこじつけた第一人者と言えばナルディのイメージだが、他にも同じことを考えた人々はいる。例えばトムソン、ニードナゲル、サンドバルなど。「一匹見つけたら十匹はいると思え」とはこのことだろう。この理論には直接関係ないが、どこかで紹介してもいいかもしれない。
前回も言ったように、イン・チャージはダイレクト・イニシアチブ・コントロールという三つの特性を持っている。スターターの特性はインフォマティブ・イニシアチブ・ムーブメントである。同じ外向型であるイン・チャージとは、イニシアチブのみが共通する。
この二つのグループは自分が相手に対してイニシアチブを取りたいと思っている。相手に話しかけられて答えることもできるが、それは心地よいことではない。最初に整理しておくと、インタラクション・スタイルは行動によってタイプを分類する。「お喋りだからE型」「はっきり言わないのはF型」などのステレオタイプによって「○○タイプに見えない」事件が発生するが、これは「○○タイプの行動」を誤解しているせいである。そして、人は常に自我のタイプで行動するわけではない。これについてはそのうち詳しく説明する。
スターターは物事を開始することを好む人々である。彼らは流行に敏感で、始めることには積極的だが終わらせることができない。心当たりのある人もいるのではないか?「ESFJだけど何も終わらせることができない」という人がいたら、安心していい。もっとも「安心していい」というのは「ミスタイプではない」という意味で、「やりっ放しでいい」という意味ではない。
インフォマティブは総じて口数が多い。口数が多い割に、いや多いゆえに何が言いたいか判然としない。典型的なのはENTPだろう。ENTPとENFPは最も内向的な外向型と言われるが、それは人に話が伝わらなかった結果なのかもしれない。インフォマティブと話す時は文脈を読んで答える必要がある。日本人はこういう話し方をする人間が多い印象があるが、タイプの半数は率直に話すことを好む。
私のところには定期的にINTPと思われる人物から質問が来るが、彼らは私の矛盾を気にするだけでなく、自分の質問文の矛盾も気にしているので、必然的に文章が長く回りくどくなる。さらにコントロールタイプでもあるので、自分が意図する答えを引き出すために補足情報を与えて方向性を絞り込もうとする。ダイレクトは自分が聞きたいことだけ聞いてくる。彼らは読書感想文が苦手だったに違いない。普段は「人の気持ちを気にして言い方に気を遣う」という設定を守っているNFJも混ざっていることだろう。実際のところ、インフォマティブは人の気持ちに配慮しているのではなく、元々そういう話し方というだけの話である。
ENTPが率直である場合、それは彼らが何か悪いものを食べたからではなく、無意識である影、つまりINTJの状態であるためである。その場合、彼らはダイレクトに見えるが、自我や潜在意識はインフォマティブである。心の四つの側面は各インタラクション・スタイルに関連付けられている。つまり、精神全体を支配する一つのスタイルはない。自我、無意識、潜在意識、超自我は独自の気質、独自のインタラクション・スタイルを持つ。タイピングの際にはこれを念頭に置く必要がある。
ところで「SJになれなかった人々はADHDになる」と言ったことがあるが、これはムーブメントの人々にも当てはまる。ムーブメントは動いていることを好むので、その挙動がADHDと間違われる恐れがある。
ムーブメントが物事を完了できないのは、そもそも彼らにとって「完了すること」が重要ではないからである。そうでなければ「ムーブメント」などと呼ばれない。彼らにとって重要なのは物事が動いていること、完了に向かって進歩していること、自分が行動していることなので、動いている限り結果に近づいていると思い込んでいる。コントロールは違う意見である。彼らも行動はするが、それは意味のある方法、制御された状態で行われなければならない。結果に至る過程も、可能な限りコントロールしたいのである。
コントロールの見解では、制御不能な状況において進歩は生まれない。制御できないということは、混沌の中にあるということである。氾濫する川では舟を首尾よく目的地まで導くことはできないだろう。一方、ムーブメントは混沌の中でこそ進歩が生まれると考える。流れが止まった川の中で生命は維持できない。しかし、「あらゆる種は闇がなければ発芽しない」と言うように、混沌は悪ではない。混沌と秩序に似た概念に「陰陽」思想があるが、この単語で「陰」が先にあるのも、混沌なくして秩序もないことを象徴している。世界はこの法則に支配されている。冒頭でタイプと脳の話をしたが、左脳は秩序に、右脳は混沌に対応している。そして、この話は「INFPが生きにくい理由」にも関係している。
A.J.ドレンスは「INFPはINTPより組織に適応しやすい」と言っているし、S型でも生きにくい人間はいる。しかし、何故か生きにくいタイプの代名詞として挙がるのはINFPである。最も少数派のINTJやINFJを差し置いて、なぜINFPなのか。ここで先ほどの陰陽の話を思い出してもらいたい。陰陽において陽は男性性、物質性、剛性を、陰は女性性、精神性、柔軟性を意味する。お分かりだろうか?そう、陰のイメージに最も一致するのはINFPである。よくNTやTiが反社会的と称されるが、混沌と秩序、陰と陽の観点から見て、最も混沌に近いのはINFPなのである。「バットマン」のジョーカー的なキャラクターはENTPと判定されることが多いが、本当にあの役割に相応しいのはINFPだろう。
しかし、これはあくまでも無意識が作り出したイメージに過ぎない。無意識は間違うこともあるのである。これはタイプと性別の話にも関係するが、実際に取り上げるのはまだ先になるだろう。
今回はスタータータイプについて紹介した。彼らは何かを始めることにエネルギーを費やすが、終わらせることには興味がない。なんなら始めた時点で完了した気になっている。そして、その活動がいかに素晴らしいか情報提供することで、他人を勧誘しようとする。カルト宗教の布教活動に最適な人々である。
繰り返すが、ここで言う外向性は社交性とは何の関係もない。人々に対して主導的なのが外向型、受動的なのが内向型である。インフォマティブ・イニシアチブ・ムーブメント、これがスターターを表すキーワードである。つまり、自分から何かを始めたがり、それに人を巻き込もうとするが、意思疎通が困難な人々と言っていい。次回は内向型のフィニッシャータイプについて解説する。
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