前回までは8つの心理機能のうち、4つの判断機能について解説した。判断機能は思考と感情、二つの側面から意思決定を行う。今回からは意思決定の情報源となる4つの知覚機能のうち、外向的感覚について説明する。今この瞬間に生きる人々、短期記憶へアクセスする機能である。なお、知覚機能はそれぞれ4つの元素に対応している。どの機能がどの元素と結びついているかは、アイキャッチから推察してもらいたい。
16タイプのうち8タイプは自我に外向的感覚を持っている。思考と感情同様に、これらの機能を上位4つに持つ人々をSeユーザーと呼ぶ。これらの人々は今を生きることに集中している。今を生きるには過去を顧みている暇はない。そういうわけで、これらの人々を形容して「鳥頭」という言葉が作られた。
Seユーザーは他の人々が何をしているかを観察する。そして集めたデータによって、自分が何をしたいか、何を望んでいるか知るのである。全ての機能は軸によってペアを作る。つまり、Seのデータによって、Niの願望が形成される。そして、自分の望みをSeによって外界に還元する。彼らは他人に何らかの経験を与えたいと思っている。それは良い経験であることも、悪い経験であることもあるだろう。
ビル・キーンは「昨日は過去で、明日は未来だが、現在は神様の贈り物。だからプレゼントと呼ばれるのだ」と言っている。人間は過去について「あんな風でなければ」と思い悩み、未来について「こうなったらいい」と夢想する。しかし、現在には有効期限があり、あっという間に消えていく。我々はSeユーザーの「プレゼント」をありがたく受け取らなければならない。
Seは短期記憶を司る機能である。彼らは長期的に物事を記憶しておくことができない。何か新しい情報が入って来ると、古い情報は記憶から削除される。外向的感覚が自我にあると、内向的感覚は無意識に沈められる。「あの時はこうだった」と思い返していては、今を生きることはできない。特にENTJ、ENFJ、INTJ、INFJのNJ四天王は物忘れが激しい。彼らのSiは下位二つのスロット、トリックスターかデーモンにあるためである。
彼らほどではないが、SiクリティックであるISTPやISFPも記憶力は悪い。状況に合わせて、いかにも覚えているかのように振る舞うのは上手いが、実際は忘れている。外向的感覚は物理的環境を操作し、現在何が起こっているかを追跡する。目の前にあるものを細部まで認識するため、機械の扱いも上手い。そして他人が何をしているかも目ざとく観察している。他人がやっていることを知らないと、自分が何をしたいかわからないからである。
SeヒーローであるESTPやESFPには、劣等Niの問題がある。彼らは自分が間違ったものを望むことを恐れている。だから情報収集することに囚われて、決断を下せなくなる危険性がある。色々な経験をしてみても、人生で何がしたいのかわからないのである。
SPたちは今この瞬間に生きている。彼らの人生は即興の連続であり、何も計画していない。目の前に障害物が現れると、反射的にそれに反応する。いわゆる「戦術家(物は言いよう?)」的な人々である。記憶力を代償に、彼らは高い反射速度を手に入れた。何かを手に入れるには代償が必要である。忘れっぽい代わりに、彼らはどんな状況にも素早く対応できる。何か緊急事態が起こったら、彼らはSiユーザーを救ってくれるだろう。Siユーザーは反応が鈍い。火事が起こったら逃げ遅れて、SPの消防士に助けられるタイプである。
これが何を意味するか?例えばテキストメッセージを送って返信が早いからと言って、彼らがあなたを重要な存在だと思っているわけではない。彼らにとって「相手が見ている」と確信できないメッセージは無効なのである。メッセージに空白が生じた場合、会話をやり直した方がいい。間違っても長文のメッセージを大量に送りつけるようなことをしてはならない。
外向的感覚の問題は、「もしも未来がこうなったら」という想像力に乏しい点である。外向的感覚は「あるがまま」を知覚する。彼らが想像するのは「これが私に起こったらどうなるか」であり、「他の人に起こったらどうなるか」ではない。今は何が起きていて、他の人々が何をしているかを知りたがる。ビスマルク曰く、「どんな愚か者でも、経験から学ぶことはできる」。彼らはそれを知っているのである。しかし、過去に学んだことは忘れてしまうので、泳ぎ続けないと死ぬサメのごとく、何かを経験し続ける必要がある。彼らにとっては今、自分が望むようにすることが重要なのである。知ってのように、SPたちの行動はめちゃくちゃ予測可能である。彼らは独創性に興味がない。他の人々がやっていることを知覚して、集めたデータの中から自分が何をするか採用する。
このため、外向的感覚と理論は相性が悪い。特にSPたちにとって、理論は現実に存在するものではない。「○○大学合格必勝テクニック」が知っている唯一の理論だというSPも多いだろう。だから何かを理解して欲しい時に理論を持ち出して説明しようとしても、相手には響かない。悪くすると、非現実的なことで時間を無駄にさせられたと悪感情を抱く。例えば、性格診断でNTが「まさに自分のことだ」と感じる人物像は、SPにとって「現実に存在しない人」である。
彼らは常に何かを証明せずにはいられない人々である。言い換えると、物理的なものや有形のものを見せることができないと、彼らの気分は悪くなる。彼らにとっては、具体的なものが全てである。物質性の追求と精神性の対立については、「肩をすくめるアトラス」を読んで欲しい。ここで非現実的な哲学の話をすると、SPの人々が激怒してしまう。さらにSPたちが嫌うのは、自由を奪われることである。試しに彼らを怒らせてみれば、SiとSeの違いが観察できる。Siユーザーは攻撃されてから反撃するまでにタイムラグがある。彼らは復讐の機会を待つことができるが、Seユーザーは即座に反応する。すぐに反応しないと、忘れてしまうからである。
タイプに対する偏見やバイアスは色々あるが、そのひとつが男性と女性に対するステレオタイプである。SJであっても、男性は男らしく戦い、機械いじりが得意なSeユーザーとして振る舞うことを期待される。女性の多くはSJなので、SPの男性を好む。外向的感覚は男性的な機能というバイアスのせいで、ISTPの女性はSJ的な女性像を押しつけられる。つまり、SJの男性は「男らしくない」と非難され、SPの女性は「女らしくない」と難癖をつけられる「JPスイッチ」が発生するのである。
Seユーザーは今を生きる人々である。彼らに過去を問いただしてはならない。彼らは今しか見えていない。SPたちに理論の話をしてはならないし、自由を奪ってもならない。空間は取り戻せるが、時間は取り戻せない。彼らは時間の重要性を体現する人々である。同時に、現実のしがらみに縛られてもいる。性別に対する偏見は脇に置き、タイプの違いを理解することが重要である。いい感じにまとまったところで、今回は終了とする。
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