今回はイン・チャージに属する最後のタイプ、ENFJを紹介する。ENFJは理想主義者であり、メンターとして人々を主導する役目を負うタイプである。彼らのSeチャイルドは「誰かのために頑張る」ことで力を発揮する。特にSiチャイルドや劣等Siの人々にはありがたい存在だろう。ただし、その裏には複雑な心理が隠れている。

Seチャイルドは人々に良い経験を与えたいと思っている。いわゆる「パリピ」はESFPのイメージがあるが、ENFJも負けてはいない。彼らは非常に社交的である。アカデミー俳優並みの演技力を発揮して、皆の気分が良くなるようにパーティーを盛り上げる。彼らは理想主義者である。ただの経験ではなく、最高の体験を与えたいと思っている。キッチンでも寝室でも、ENFJは常に全力である。

何故そこまでするのか?これはFeヒーローの性質である。Feヒーローにとっては、他の人々がどう感じるのかが最重要事項である。つまり、集団的な倫理に従って意思決定を行う。彼らはその場にいる人々の気分を感じ取り、それに合わせて感情表現する。機嫌の悪い人がいると、どうにかして気分を明るくさせようとする。そうしないと皆の気分が悪くなってしまうからである。「本当に楽しむ必要はないが、楽しんでいるふりはしろ」と口に出すかは別として、真意はそういうことである。彼ら自身、そうするのが当然なので他人もそうであるべきだと思っている。

Feヒーローであるため、ENFJが提供する経験は「相手が良い気分になる」ためのものである。ENTJは自分が良いと思った経験を与えて自己満足しているが、ENFJは相手を満足させるために経験を与える。ただし、それは「私が考えた、あなたのための経験」なので、それはそれで息苦しいことがある。

このような性質から、ENFJは玄関マットのように扱われる恐れがある。彼らは過去の経験を覚えていないので、しばしば利用されていることに気づかない。例えば、ENFPには気をつけなければならない。彼らは隙あらばFJたちを利用しようとする。「悪霊」のスタヴローギンもENFPである。彼らの悪徳は堕落であり、人に対して極度に操作的になる危険性がある。一方、誰かが利用されている場面をSeチャイルドが感知すると、ENFJはすぐさま反応する。しかし対象が自分にしても他人にしても、ENFJは決断が速すぎて間違った思い込みに囚われることがある。

ENFJはNiペアレントによって選民意識を持っている。自分は望むものを知っており、最良の未来を選択しているが、他の人々は間違った決断を下している。彼らは人間の愚かさに心を痛めており、自分が正しい道を示してやらねばならないと思っている。特に、誰かが人間関係に影響を与える決断を下した場合、ENFJはしゃしゃり出ずには気が済まない。そしてENFJを主役としたドラマが引き起こされる。

ENTJと同様、ENFJは他人が悪意を持っているのではないかと警戒している。自我にあるNiが自分の未来を確信すればするほど、無意識にあるNeクリティックは、他人の裏切りが自分の未来を台無しにすることを予言する。彼らは他人を信用していない。Feヒーローが感じよく振る舞うのは、それをカモフラージュするための演技である。

Seチャイルドと劣等Tiにより、ENFJは個別のケースバイケースで人間関係を考える。過去に忠誠心を見せた実績のある人間でも、Neクリティックは信用できない。過去がどうであれ、現在は違うかもしれない。今回は裏切るかもしれない。そして、そういう自分の思考によって更に不安が増していく。

なぜSeチャイルドは他人に良い経験を与えようとするのか?見返りに忠誠心を期待しているからである。桃太郎が動物たちにキビ団子を与えたのは、見返りに部下になってもらうためである。つまり、ENFJ主催のパーティー、あるいは慈善活動や宗教団体の催しに参加した人間は、彼らに忠誠を尽くさなければならない。このようにして、ENFJを「主人公」とした人間関係が形成される。

ENFJは自分の考えに自信がない。劣等Tiは自分が愚かであること、間違っていることを強く恐れている。だから自分の考えが正しいことを、誰かに認めてもらわなければならない。ENFJがFeやSeによって他人の認識や忠誠心を求めるのは、この弱点をカバーするためである。自分が良い経験を与える代わりに、相手は自分の間違いを指摘しないで欲しい。この手の「口に出さないが守るべきルール」をENFJの劣等Tiは標準装備している。相手から一度も伝えられていなくても、我々にはこれを遵守する義務がある。

ENFJは過剰なコミュニケーションを必要とする。これはNeクリティックの疑念を解消するため、そして劣等Tiの不安を和らげるためである。相手がどのように考え、なぜその行動を取ったのか知っておけば、裏切りに備えることができる。勿論そんなことは億尾にも出さない。表向きは「ひとりひとりの違いを知りたい」と美しいお題目を唱えるだろう。主人公が仲間を疑うことは許されない。どんな些細な情報でも把握しておくことで、ENFJは自分の考えが間違っていないという自信を持つ。

ENFJが自分の思考力に対する不安を乗り越えれば、潜在意識ISTPを活性化することができる。自分が正しいことをしていると信じられれば、コミュニティに所属する人民を幸せにするために、最高の体験を与えることができる。同じことがENTJにも起こる。ENTJは自分が善人であると信じられれば、勤勉に仕事に取り組んで、目を瞠るような作品を作り出すことができる。

Siトリックスターのため、ENFJはせっかちである。早く決断を下さないと、やろうと思っていたことを忘れてしまうからである。せっかく過剰にコミュニケーションを取って手に入れた情報も、時間と共に記憶から消去されてしまう。彼らに情報提供する際は、文脈を理解していることを確認しておかないと、ENFJの劣等Tiは容易に混乱する。そして「会話量の割りに意思疎通ができていない」という状況が頻繁に発生する。彼らに重要な情報を与える際は、書面に書き留めておくか、本人にメモさせた方がいい。

ENFJは長期記憶に難がある。ENFJが物体を手に取ると、彼らは物体にまつわる情報を思い出す。ENFJは記憶を外部に保存しているのである。私はふざけているのではなく、無意識が忘れていた筈の記憶を思い出す仕組みを説明している。このことはユングも認めるところである。記憶力に難があるため、彼らはSiユーザーを必要とする。Siユーザーが大事なことを覚えておいてくれれば安心して忘れることができるし、過去に与えた素晴らしい経験を念仏のように唱えてもらうことで、自分の価値を確かめられるからである。

ENFJの無意識はINFPである。Fiネメシスは自分の価値について心配している。彼らが「誰かのために頑張る」のは、そうしないと自分の価値を認めることができないからである。ENFJは金やステータスをそこまで気にしない。しかし、他人に感謝されるために努力するので、結果としてそれらを手に入れることがある。外部からの評価や認識がないと、彼らは「自分は頭の悪い無価値な存在だ」という思いに苛まれる。

ENFJは理想主義者の一角を占める。しかし、実際は自分の理想を達成できないことを知っている。彼らの価値は外部の人間に依存しているからである。このため、「優れた人間性」を持つ人々に囲まれていないと、安心することができない。不安を喚起する相手には、完璧主義を振りかざし、自分の理想の人間であることを要求する。

本人たちは認めたくないだろうが、ENFJは管理される必要がある。彼らの感情、および思考の双方が管理対象である。ENFJがどれだけ役に立っていて、素晴らしい体験を提供しているか感謝することで、彼らの感情を管理することができる。エーリッヒ・フロムによると、愛することは技術である。つまり、相性の良いタイプと上手くやっていくにも、技術が必要なのである。各タイプには愛に関するルールがある。ENFJの愛の言語は「肯定の言葉」である。次点で贈り物をすることも好む。勿論、受け取るのも好きである。彼らの影であるINFPはその逆である。INFPの愛の言語は贈り物で、次に肯定の言葉である。

ENFJは人間関係に重点を置いており、コミュニケーション過剰なので罪悪感を感じる機会が多い。Feヒーローは自分が悪者になることを何としても避けようとする。彼らは自分の好き嫌いを表に出して周囲から人間性を批判されることを恐れているので、ENFJを利用したい場合は罪悪感に訴えるのが有効である。特にINFPやENFPは、人の罪悪感に漬け込んで欲しいものを得る達人と言えよう。

劣等機能は潜在意識へのアクセスポイントであり、デーモンは超自我へのアクセスポイントである。ENFJに「お前は愚かだ」と告げてはならない。それが真実であったとしても、そんなことは聞きたくないのである。彼らの考えに耳を傾け、自分を弁護する機会を与えなければならない。間違いは誰にでもあり、自分が愚かなわけではないと証明させるのである。英語で「Have your day in court(反論の機会がある)」という言葉がある。まさにENFJに必要なものであろう。その機会を与えなければ、超自我ESTJが取って代わる。彼らは冷酷にあなたの「ルール違反」を裁き、死刑執行人として為すべきことを実行するだろう。「そんなルールは聞いていない」と騒いでも無駄である。

ENFJの残酷性を引き出さないように、今回の記事を参考にしてもらいたい。タイプについて読者が知らなければならないことは沢山ある。例えばタイプの美徳と悪徳、相性と関係、彼らの偽善や取引を行う方法などである。そして人間の育成については男性性と女性性、人間関係や魅力のシステムについてシリーズ化していく。ただし私は「お気持ち」には忖度しないので、その点については了解してもらいたい。