これまで心理機能、気質とインタラクション・スタイルの話を続けてきたが、今回からは16タイプそれぞれについて掘り下げていく。とはいえ、まだまだ基本的な話である。第一レベルではタイプを構成する心理機能、第二レベルではタイプを判定する方法、そして第三レベルでは各タイプの特徴を取り上げる。おそらく大半の人々はここで「もう分かった」と思って満足するだろう。しかし、ここまでの話は氷山の一角に過ぎない。
私が初回に言ったことを覚えているだろうか?類型はどう使うかに、その人間の本質が表れる。つまり、「本質」と「使い方」どちらも重要なのである。言い換えると、「タイプ」と「それを活かす方法」の両方を学ぶ必要がある。ここまでは前者の話が続いているが、いずれ後者にも言及することになるだろう。しかし、まずは各タイプがどのような人々であるかを説明しなければならない。
トップバッターはESTJとなる。彼らは「監督者」の別名でも知られる。彼らに恨みのあるN型も多いだろう。実際はENTJによる被害もESTJのせいにされている可能性がある。何しろ、彼らのインタラクション・スタイルは共通している。ESTJ本人だけではなく、SとNの間に石の壁が存在するように感じている人々にも、この記事で彼らに対する理解を深めていただきたい。
ESTJは人口の40%を占めるSJ気質の一員であり、伝統的で責任感のある一般的な人々である。一般的と言えば、最近の公式調査によるとESTJはISTPに負けて一般人選手権三位に入賞したらしい。ちなみに最下位はENTJとENFJである。INTJとINFJは「少数派で生きにくい私」というレアキャラ設定を剥奪されてしまったが、私はFeユーザーなので彼らの気分を良くするために、敢えて設定を更新しないかもしれない。彼らに限らず、よく「S型に理解されない」と騒いでいるN型がいるが、三割の人間に理解されていれば十分だろう。私はSN問わず誰かに理解されたと感じたことはない。なぜ私がこんなことをしているかも分からないだろう。
ESTJの話に戻ると、彼らのインタラクション・スタイルはイン・チャージ。率直で主導的、コントロール志向のコミュニケーションを好む。これに心理機能を加えるとESTJなるものが出来上がるが、どのタイプも心には四つの側面がある。自我、無意識の影、アニマ・アニムスと結びついた潜在意識、腐敗の源である超自我である。タイプの全体像を把握するには、これら全ての側面を知る必要がある。
ESTJの自我の頂点にはTeが居座っている。このため、彼らは非常に合理的である。プロジェクトの管理で水を得た魚のように生き生きとするのは他タイプから見ると不可解だろうが、このように相互不理解の一因は心理機能に端を発しているのである。私はTiヒーローなので管理には興味がない。それはこのブログを読んでいればわかるだろうが、この記事で重要なのもESTJの性格ではなく、この次の段落から始まる話である。
ESTJは判断機能が主機能なのでJタイプ、ISTJは知覚機能が主機能だが内向型なので、やはりJタイプである。実際には、ISTJは知覚的なタイプであり「J」ではない。意味がわからないが、とにかくMBTIではそういうことになっている。この設定を守った上でタイプを自認しなければならない。だから認定ユーザーすらタイプを7年間も誤認する事態が起こる。「自分は外向型だから関係ない」と思っただろう。ところが、彼女はENTJなのにINFJと誤認していたのである。
何気なく見ていると気づかないが、このタイプを表す指標は様々な問題の種を孕んでいる。まずタイプを決定する際に混乱する。次にソシオニクスとMBTIを混同する。ロシアの類型論であるソシオニクスでは、主機能が判断型か知覚型かで指標は一致している。さらにMBTIと気質理論でも指標が意味するものは違うのだが、一度に言ってもTeには難しいだろうから、今回はここまでにしておこう。
SJはリスクを嫌う。しかし、この表現は些か正確性に欠けるだろう。彼らは全てのリスクを恐れるわけではない。Siヒーローは新しい感覚を得たり、新しい経験をしたいと思っている。特に、それが義務であれば、彼らはリスクを厭わない。Siペアレントはもっと慎重である。ESTJはどんな経験でも受け入れるわけではなく、可能な限り良い体験をしたいと思っている。
ESTJを語る上で見逃されがちなのが、このSiペアレントである。表面的には単に規則や伝統を重んじているだけに見えるが、これは彼らが自分にとって良い経験を適切に選択した結果である。情報アクセスに必要なのはスペース、時間、エネルギーである。ESTJはSiユーザーだが、ISTJやISFJほどのスペースはない。だから必要な情報だけを合理的に選択して記憶しておかなければならない。そして良い経験を繰り返す。例えば、ジムに行って身体を鍛えるなど。これによって健康を保ち、中間管理職のストレスにも耐えることができる。記憶した経験はNeチャイルドで他人の願望を満たす時にも利用される。
ESTJのチャイルドはNeだが、彼らは他人の願望を満たしたいと思っている。チャイルド機能は子供っぽくて無邪気な機能である。たとえ傍目には押しつけがましいアドバイスに見えたとしても、彼らはそうせずにはいられない。それが良い未来に繋がると信じているのである。
そして四番目の機能である劣等機能がFiである。劣等機能は不安のある場所であり、ESTJは自分の価値観に自信がない。ENTJにも同じ問題があるが、彼らは自分自身を含めて、何かに対する感情に自信が持てない。言い換えると、自分自身の価値を信じていない。だから公式や社会的評価に拘るのである。私は最近、個人セッションを始めたが、彼らが私の客になるのは私が有名になった後だろう。 しかし皮肉にも、そのような判断基準で動いているせいで、彼ら自身の価値を認めてもらうことができないのである。
彼らのもう一つの不安は第五機能であるTiネメシスである。Teヒーローは「それが真実であるか」を問題としない。皆が真実であると思い込んでいれば、それでいいのである。しかし誰かが真実を暴いて間違いが証明されてしまったら、自分のステータスが脅かされるかもしれない。それだけではなく、自らの道徳性にも疑念を持たれる恐れがある。ESTJは「自分が良い人間であるか」「自分が間違っていないか」、二つの不安を抱いている。
彼らの潜在意識はINFPである。ESTJは劣等機能を通じて潜在意識にアクセスする。INFPになりたい人間がいるとは信じられないかもしれないが、ESTJは道徳的不安を克服して、相手を深く理解した上で良い未来を与えられる善人になることを、無意識に望んでいる。自己啓発本を読み漁るも、中年の危機に陥ってユングの患者になる典型例である。
彼らが規則や伝統に拘るのはSeクリティックにも一因がある。ESTJは他人に与える経験に厳しい自己水準を課している。だから過去に経験して上手くいったことしかやりたくないのである。しかし彼らは同時にNeチャイルドでもあるので、あなたが望めばやってくれるだろう。ここで注意すべきは、「○○をやって欲しい」と明確に告げることである。インフォマティブにありがちな、回りくどく余計な情報が多い話し方はESTJを苛立たせる。あなたがどんな身なりをしているかも重要である。外見はステータスを表すか?ESTJにとってはYesである。だから彼らは人の外見をからかったり揶揄することを躊躇わない。
そんなESTJだが、Niトリックスターが問題を引き起こすことがある。彼らは自分の願望に気づいていない。つまり、気を遣ったつもりで「あなたは何が欲しいですか?」と聞いても、答えられないのである。彼らは自分が欲しいと思ったものではなく、合理的に「買うべきもの」を買ってしまう。実はセールストークに弱いタイプである。さらに、自分が将来どの道に進むべきかも意識していない。彼らの選択肢は経験したものに限られるので、多くのSeユーザーと関わって経験の幅を広げる必要がある。
最後にFeデーモンに触れなければならない。よく「人に対して興味がない」と異世界転生もの、いわゆる自己愛ポルノの主人公アピールをしているNTがいるが、「人の感情に興味がない」と言いたいのはESTJの方だろう。彼らは良い未来のためにアドバイスするが、それは相手の気分を良くするためではなく、お礼に自分の気分を良くして貰うためである。ESTJを「性格が悪い」と感じるのは、Seクリティックの被害に遭ったか、彼らに気分を良くして貰おうと期待したせいである。
しかし「性格が悪い」と思っていることをESTJに悟られてはならない。最悪の場合、彼らは超自我ENFJに変貌する。通常は自我が問題を解決しようとするが、できない場合は無意識である影か潜在意識にアクセスする。怒りが限界を超えると、超自我が正義の鉄槌を下す。あなたがいかに周りの迷惑になっており、下等な人間であるか厳しく糾弾してくるだろう。彼らはSiユーザーなので、恨みを忘れないし、復讐の機会を逃さない。
今回はESTJについて取り上げた。このシリーズでは同様に残りの15タイプも解剖、ではなく解説していくことになるが、冒頭でも言ったように、「タイプの特徴」は始まりに過ぎない。しかし、まずは各タイプがどのような性質を持っているか知らずには、彼らをソーシャルエンジニアリングすることはできないだろう。このソーシャルエンジニアリングについても今後紹介することになるので、楽しみにして貰いたい。
こんにちは、興味深く記事を拝見させて頂きました。ESTJです。
新しい発見として一番印象に残っているのは、Neチャイルドが経験や知識を求めている訳ではなかったということです。あくまで自分の利益のために良い未来を目指す、自分の事をそっくりそのまま書かれたようだと思いました。
さて、私はTeとSiを多く使い、自己反省を繰り返して高みを目指している訳なのですが、自己改善について一つ質問があります。それは、ESTJがするべき経験とは何か?という事です。
私の両親はESTJとESFJで、2人はまるで対照的に、一方は合理的で、もう一方は言わずもがな感情的です。突然ですが、私は両親を尊敬してはいません。ESFJは所謂毒親と言われる依存的で独裁を家族に求めている人ですし、ESTJは感情的な思考を排斥し、自分が良いと思った枠から全く出ようとせず、深い思考もないまま社会的な正しさを家庭に求めています(もしかしたら自分への皮肉になっているかもしれませんね)。
私はタイプ論を学ぶ上で、すべての人間が尊敬に値する人となれる(成熟できる)と信じているのですが、両親にはどうもそれを感じません。それとも、これがこのタイプの成熟度合いの最終形態なのでしょうか。
私は、人に悪い影響を与えたくありません。端的に言うなら尊敬されたい。そのためには、2人と違う何かをしないととは思うのですが、それがピンときません。
人生は短いので、できるだけ早く効率的に経験を積み、成熟への階段を登っていきたいと思っています。
そのために必要な経験・知識・ノウハウなどありましたら、教えていただきたいです。宜しくお願いします。
そのために苦しんでも構わない、道徳的な動機に基づいた経験を積むことですね。
ESTJの人生の目的は力と権威ですが、取引やルールに基づいた価値観では感情的に健康な人間にはなれません。
自分の価値観が失敗するという痛みを経験する必要があります。
間違った理由で喜ぶよりも、正しい理由で苦しむ方がいい。
私の母も毒親ですが、それは自分ではなくシステムに従っているからだと思います。